税務署よ、いい加減にしてくれ

税金のことで用事があり税務署に行った。

手続きをしてもらっている間、近くの席に座って待っていた。

すると職人の方が近づいてきて、税務署に対するアンケートに協力してくださいとアンケート用紙を手渡してきた。

 

待っている間、特にすることもなかったのでアンケート用紙を埋めていった。

アンケートの内容は職員の応対や説明について5段階で評価するもので

最後の項目に税務署に対する要望や不満を記載するフリースペースが設けられていた。


私はアンケートにおいて、こういうフリースペースは

「書き忘れたんじゃなくて特筆することがない」

という事を伝えるために
「特にありません」

と書くようにしている。

いつものように「特にありません」と書こうとしたときに違和感に気付いた。

 

紐が短い。

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これは実際のアンケートではないが、こんな状態だった。


一体どう書けというのだ。

紐の長さはいっぱいいっぱいで、ピンと張っているので常に上方向に力が働いている状態で書くことを強いられる。

このアンケートを作った人は実際に自分でこのアンケートを書いていないだろうことが予想される。

この税務署への要望の欄は「特にありません」と書こうと思っていたが、

「紐を長くしてください」と書いてやろうかとも思った。

しかし実際に書こうとすると書きにくい事この上なく、ストレスが半端ではなかったので何も書かずに出した。

 

それとも何か?

ボールペンが紐でくくられているから、この範囲しか動かせないという固定観念に囚われず、

例えば紐を外してから書くなどの柔軟な思考が出来るのかを試しているのか?アンケートに見せかけて。

メンインブラックのエージェント試験の時のウィル・スミスじゃないんだから税務署がそんなことを試さないでほしい。

私は納付書が欲しいだけなんだ。

 

それにしてもこのアンケート、うまく作ったものですべての項目を埋めてから最後にこんなトラップがある。

この手のアンケートはすべて「非常に良い」の項目にチェックを入れるのだが、今回もそのようにした。

「非常に良い」と評価さえ貰えば後は知ったことかという態度が透けて見える。

最後の最後で紐が短いという罠。

その罠に気付いた時にはもう遅い。

配布物の内容についての項目は「非常に良い」にチェックされている。

「いかがでしたか?」なんて、よくもいけしゃあしゃあと言えたものだ。

 

あまり言い過ぎて腹いせに税務調査に入られても困る※

なので税務署への要望はただ一つ。

「調査の際はお手柔らかに」これだけだ。


※もちろん腹いせに税務調査なんてことはありません

正月に妻の実家に行きたくない

正月の過ごし方を妻と話し合った。

 

今まで他人だった者同士が精神的な結びつきはあるものの、

紙一つで強引に一つの家族となるのだから習慣が違うのは理解していたつもりだった。

 

しかし結婚してから初めての正月をどう過ごすかについて話し合った結果、ここまで違うものかと思った。

 

私の家の正月といえば、1月1日は実家で過ごす。特に親戚が集まることはない。

まず朝食は各々が用意して食べる。

お昼になるとお節料理とお雑煮が食卓に並ぶので、そこで初めて家族そろって一緒に食事をする。

ちなみに家族が全員そろって食事をするのは1年の内この時だけだ。

それだけが我が家の正月の恒例行事なので、この日これ以降は家族で行動することはない。

 

そして2日・3日にそれぞれの祖父・祖母の家に行き新年のあいさつをする。

これも各々が好きな時にバラバラに行く。

そしてこの時はお節料理やお雑煮を食べることはない。

要するに親戚付き合いは極めて希薄で、家族のイベント事に無関心な家庭なのだ。

そんな家庭で育ったので、年末年始だからといって特に何か家族でしなくてもいいんじゃないかと私は思っている。

新年の挨拶をして、ちょっと一緒にお茶を飲んだらそれで解散くらいでいいかと思っている。

実際に両親に正月どうしたらいいか聞いてみたところ

「別に来たかったら来たらいいんじゃない?でもあんまりベッタリっていうのもお互いねえ…」

となんともドライな返答だった。

 

しかし妻は違う。

妻の家は1月1日から2日にかけて妻の祖父の家に行く。

そこには妻の祖父・祖母・妻の両親・妻の叔母家族・妻の兄家族が一緒になって新年を祝うそうだ。

1日の昼から祖父・祖母の家に行きお昼ご飯を一緒に食べる。

その後リビングで一族そろってくつろぎながら近況報告をするそうだ。

「お昼ご飯を食べてお腹いっぱいの状態でホットカーペットが敷かれたリビングでくつろいでいると眠くなって寝てしまう。気付いたら皆でお昼寝してたよ」

とは妻の言葉。

そして夜は一族そろって食卓を囲み鍋を食べる。

その後はまたリビングでくつろぎ、順番に風呂に入りそれぞれのタイミングで寝る。

 

次の日も一族で朝食を共にして初詣に行き、毎年恒例の和食屋に行き昼食を取る。

その後、各々で解散する。

これが妻の年始の過ごし方だそうだ。

 

ここに自分が参加することを想像しただけで眩暈がする。

なんというか家族の濃さに胸やけしそうだ。

 

一つ一つ胸やけポイントを整理していくと、

集まる親戚の数が尋常じゃない。

私の結婚式でもここまで集まらない。

私と妻を入れて集まる人数を数えると総勢11人。サッカーでもやるのだろうか。

妻の叔母家族なんて絶対に話す話題がない。

妻がトイレに行っている間、私は一体何を話せばいいのだろうか。

妻の祖父は国鉄の職員だった方で、誰に対しても(特に若い人には)国鉄時代のストライキの話をエンドレスリピートするらしい。

「次の正月の時、おじいちゃんの生贄は君だね」

と妻の兄に言われた。

妻の祖父は私達の村を脅かす魔物か何かですか?

 

皆でリビングでくつろいで、昼寝までする。

絶対に出来ない。まずくつろげる瞬間は来るのだろうか?いや、ない。

家族間の悲劇はこういう所から生まれる。

なぜ気付かないのだろうか。

妻やその家族にとっては、そもそも親類縁者であるし、その距離間で付き合う空間に何の遠慮も違和感もないのだろうが、私は違う。

「自分がこう感じるのだから、相手もこう感じるだろう」

そういうことではない。

人にはそれぞれの価値観がある。しかし何故かそれを見落としてしまう人がいる。

意外と見失いがちな視点だ。

今、その見失われた視点により悲劇がまたここに。

全く知らない、しかも向こうは血の縁がある所に単身乗り込んでいく私の気持ちを推し量ってほしいところだが、どうもそうはならないようだ。

そんな空間で昼寝。しっかりお布団に入って暗くしないと寝られない私が寝られるとは思えない。

皆が寝てしまって妻の叔母と二人きりとなったらどうすればいいのだろう。

結婚生活の秘訣でも聞けばいいのだろうか。そんな話題、10分も持てばいい方だ。

 

夜には皆で鍋をつつく。

私は潔癖ではないので、例えば友人達と鍋をつつくことに抵抗はないが、この状況ではどうだろう。

同じ鍋で食事できるかどうかは、なんとなくだが、どの程度打ち解けられているかが指標になるような気がする。

そしてその指標で言えば多分アウトだ。ギリギリではなく結構はっきりとアウトだ。野球だったら「リクエスト」の申請もしないぐらいのアウト具合だ。

そういえば、妻の義理の姉(妻の兄の妻)は私と同じ立場だ。

前の正月から参加しているようで、唯一私と同じ思いを共有できる仲間だと思ったので、

妻に「君の義理のお姉さんはどんな感じだった?」と聞いてみた。

すると昼寝もしてたし鍋もモリモリ食べていたとのことだ。

孤軍奮闘。

何故かこの四文字が私の頭の中に浮かんだ。

 

地味に嫌なのがお風呂の順番と寝る環境についてだ。

妻の祖父や祖母は早くに寝るそうなので必然お風呂も最初に入るのだろうが、

おそらく私は早めの順番で入るように促されるだろう。

風呂は自分のタイミングで入りたい。

そして寒い時期は風呂に入った後すぐに温かい体のまま布団に入りたい。

こんなことすら自分の思い通りにはならないだろう。

そして次の日の朝、洗面をするのは?髭を剃るのは?髪を直すのは?

他人の家、しかも姻族の家を自分勝手に使うことが憚られてしまう。

行動のいちいちに気を使ってしまい気疲れすることだろう。

 

そして妻の祖父の家に行ってから24時間。

ようやくここで解散だ。

海外ドラマの24は手に汗握る名作だが、こっちの24も色んな所から汗が出そうな名作となっている。

 

私と同じ感覚を持っている母にこの事を伝えると一言

「頑張って」

と言われた。

 

私は常々、色々な事にこだわりがないと言ってきたが

こだわりがない人がこだわりがある人に合わせる事に疑問を抱いている。

私には「こだわりがない」というこだわりがあるのだ。

だからこだわらず適当に過ごすというこだわりに合わせてほしい。

なんて屁理屈をこねている、実際に妻に言うと大喧嘩になる事は目に見えているので言わないが。

 

つまり色々と言っていたが要するに正月に妻の実家に行きたくない。

男性らしい肉体を得ることと引き換えに妻の心が離れていく

父はサプリメントを常用している。

 

そのこと自体は特に珍しい事ではない。

現代人にとって不足しがちな栄養素をサプリメントで補うことは当たり前になってきた。

先日、宿泊した旅館の朝食ビュッフェでは様々な料理と並んで、サプリメントもビュッフェスタイルで取れるようになっていた。

サプリメントは私たちにとって、無くてはならないものの一つであると言えるだろう。

 

しかし父のサプリメント摂取量は普通ではない。

養命酒カップいっぱいにサプリメントを入れて一気に飲んでいる。

完全にサプリメント依存症だ。

薬局に置いてあるようなサプリメントはほとんど網羅しているのではないだろうか。

それを毎朝飲む。

色々なサプリメントを飲み過ぎて、どのサプリメントがどう体に効いているのか分かっていないと本人が言っている。

 

そんな父を見てきたので「父は健康だけど、病気だ」と常々思っていた。

サプリメントをガバガバ飲む父のようにはなるまいと思っていた。

 

しかし私もサプリメントの力を借りる時が来てしまった。

妻からお誘いをもらった時に、疲労を言い訳に断ってしまった。

後日、これはまずかったと思い、男性機能の強化の方法を調べた。

すると大体以下の5つの方法があるようだ

①必要な栄養(亜鉛・アルギニン・アリシン・タウリン・ムチン等の栄養素が多く含まれている食品)を摂取する

 

②睡眠をしっかりとる

 

③お酒・たばこを控える

 

④適度な(特に下半身強化の)運動をする

 

⑤定期的なマスターベーションを行う

今の私の生活に簡単に取り入れられそうな項目として、①と④はすぐにでも実行できそうだ。

しかし①については、今は妻が食事を作ってくれているので

「今日、何食べたい?」と聞かれて

亜鉛多めの食事」とは言えない。

そこでサプリメントで補うことにした。

亜鉛サプリメントを購入し、毎朝飲むことにした。

 

そして④の下半身の運動としてスクワットがお勧めだと言われたのだが、やり方を間違えると膝に負担がかかってしまうとのこと。

なので他にもお勧めされた「四股を踏む」トレーニングをすることにした。

お相撲さんがやる四股。

この動作には下半身の筋力トレーニングの効果だけでなく、
股関節の柔軟性の向上、歪んだ体のバランスを整える効果が期待できるということだ。

 

というわけで、妻の要望に応えられる体を作るためにサプリメントの摂取と四股トレーニングを行うことにした。

 

朝、食卓に着き、妻と朝食を取る。

いつもは食べ終わった後すぐに私は仕事に行く準備を始めるのだが、今日からは違う。

おもむろに亜鉛サプリメントを取り出し、少量の水と共に飲む。

妻の視線を感じるが、特に何も言うことなく、いつも通り私を送り出してくれた。

 

そして夜、食卓に着き、妻と夕食を取る。

いつもは食べ終わった後すぐにパソコンを立ち上げ余暇を楽しむのだが、今日からは違う。

おもむろに足を肩幅より広く取り、リビングで四股を踏む。

 

私目線では逞しくなった私の姿を見て妻はうっとりしていると思っていた。

亜鉛サプリで男性機能に必要な栄養を摂取し、四股を踏んで強靭な下半身を手に入れる。

内から外から肉体をチューンアップさせている向上心の塊である私に妻はメロメロだ。

今夜は熱くなりそうだ。

そんな思いから自然と顔がにやけてしまう。

 

朝から感じていた妻の視線が更に強く私に向けられる。主に悪い方に。

それもそうだ。今まで何もしてきていなかったのに、急に今日から亜鉛サプリは飲むわ四股は踏むわ、こいつは一体どうしたんだ?と思うだろう。

行動原理が謎。

愛した夫は薬漬けで四股を踏む異形のモンスターに変貌してしまった。妻目線で見ればそんなところだろう。

 

そして妻は変わり果てたモンスターと同じリビングでは心が休まらないとばかりに早々に自室に籠ってしまった。

リビングには亜鉛を飲み、ただ四股を踏み続ける悲しきモンスターが一人。

 

後日、妻に急にこういう行動をしたのには理由があるんだ。と説明した。

それに対して妻は

「もともと男性性をあまり感じなかった人が、いきなりオス感を出してきてキモイ」

「必死さに引く」

「がっつくのが笑い話になるのは高校生まで、君は31のおじさんだから笑えない」

 

悲しきモンスターは泣いた。夜通し泣いた。

しかし妻に指摘されて、亜鉛を止めたり四股を止めたりするのは、それはそれで浅はかな行動をする奴だと思われそうで負けた気がするので、

未だに毎日、亜鉛を飲み、四股を踏んでいる。

妻はもう何も言わない。

私の勝ちだ。

夏のヒートテック、冬のNクールシーツ

私は夏にNITORIのNクールシーツを使うし、

冬にユニクロヒートテックを使っている。

 

今年の夏も当たり前のように寝具にはNクールのシーツを使っていた。

最近寒くなってきたので、当たり前のようにヒートテックを着ている。

 

しかし不精な性格の私は、そろそろ本格的に寒くなってきたというのに未だにNクールのシーツを使っている。

 

するとどうなるか。

むちゃくちゃ寒いのだ。

布団に足を入れた時にキーンとシーツの冷たさが襲ってくる。

 

布団に入り、しばらくすると体温で布団全体が暖かくなってくる。

そうなるとNクールのことなど次第に頭の隅に追いやられていくのだが、

寝返りを打ったりして温まっていない布団の端の方に足が触れるとまたキーン。

隅に追いやったはずのNクールが頭の中央に鎮座する。

そんな攻防を毎夜繰り広げている。

 

シーツを冬用のフリース素材のものに替えればいいだけの話だが、

いかんせん耐えられてしまうだけに未だに替えていない。

 

それにしても暑い夏の時はNクールのありがたみが分かりにくかった。

実際に触った瞬間は涼感を与えてくれるのだが、それも一瞬だった。

すぐに夏の気温と体温が涼感を奪ってしまい、その涼感に対して実感がわかなかった。

 

それが今やどうだろう。

秋冬の気温も相まって、とてつもない涼感を生み出している。

NITORIの言ってたことは本当だったんだ。

ラピュタを見つけたときのパズーと私がリンクした。

 

ヒートテックにしたってそうだ。

当たり前のようにヒートテックを着ているが、「ヒートテックのおかげで冷え知らず」だと感じたことはない。

もちろん、ヒートテックの性能はよく知るところであるが、実感としてそれがないという話だ。

 

私は8月にヒートテックを着た。

会社に行く時の肌着が足りなかったのだ。

いつもはサラサラの薄い肌着を着用するのだが、洗濯のタイミングを逸してしまい、洗濯済みの肌着のストックが切れてしまった。

不幸なことに気付いたのは当日の朝。

後、何分後かには家を出て会社に向かわなければならない。

 

私はヒートテックの肌着を身に纏った。苦渋の決断だった。

着用した瞬間から上昇する体温、流れ出る汗。

うおォン、俺はまるで人間火力発電所だ。

焼肉を食べた時の井之頭五郎と私がリンクした。

 

今までNクールやヒートテックを当たり前のように、時にぞんざいに扱っていたこともあっただろう。

私にそれらのありがたさを気付かせてくれた事に感謝。

そして柳井正会長、似鳥昭雄会長に感謝。

うぶでサディスティックな彼女は着付師

12月に結婚式があり、それに向けて準備を進めている。

先日、結婚式の前撮りのためにフォトスタジオに撮影に行った。

 

和装での撮影だった。人生で初めての和装だ。

自分では着られないので着付けもやってもらった。

結論から言うと本当に大変だった。

 

着付けをしてくれるのはフォトスタジオのスタッフの女性の方だった。

これから着付けをしていくので肌着になってくださいと言われたので、上は薄い紳士用の肌着、下はステテコ、そして足袋というルックスになった。

こんな姿を今日会ったばかりの女性に見られるというだけでもかなり恥ずかしい。

 

その日は少し肌寒かったので、恥ずかしながら起立した私の乳首が薄い肌着を通して自らの存在を存分に主張していた。

それはもうどの位置に乳首があるか一目瞭然といった状態だった。

 

その姿の私を見て開口一番、着付けの女性は

「うわーすごい乳首透けてますねー」

と言ってきた。

 

パニックだ。

 

初対面の女性に、しかも客と店員という関係性でこんな心を抉るパンチを放つことが出来るのか?

そして混乱すると人間おかしなことを口走ってしまうものだ。
何か返さなければと思った私は

「どうもありがとうございます」

と言ってしまった。

 

「乳首透けてますね」

に対して

「どうもありがとうございます」

完全に変態のそれである。

しかも敬語というのが変態度に拍車をかけている。

ここはいつからプレイルームになったんだ。

 

その時になって初めて着付けの女性の顔をしっかりと見た。

歳は20代半ば、きりっとした目元に、口元のセクシーなほくろ。

女優の真中瞳を彷彿とさせるような顔立ちだ。

ゴクリ…。

生唾を飲み込む音が個室に響いた。

 

会話の内容は置いておいて、最初からこのように気軽に話しかけてくれたので着付けが終わるまで軽快なトークが続くのかと思ったが、
着付けが始まると表情が一層引き締まった。

プロフェッショナルの顔だ。

 

ここからは着替えさせられるがままだった。

着付けの最中は自分がリカちゃん人形になったような気分だった。

「ここを手で押さえて」

「一歩下がって」

「手を後ろにして」

「腕を通して」

「手を上げて」

指示されるがままに動く私。

その動きに合わせて着付けを進めていく女性。

この流れで

「跪いて私の靴を舐めて」

と言われたら指示に従っていただろう。

大体こういう指示をする時は向こうは敬語じゃないのか?いや私は一向に構わないのだが。

「~してください」という言葉すらも省略し、効率化を図っているのかもしれない。

それかプレイの一環としているのか。

 

そして着付けの最後の工程として袴の紐を結ぶのだが、この時が一番きつかった。

袴の紐は腰と足の付け根辺りでグルッと何周か結ぶのだが、
足の付け根辺りでグルッと結ぶということは、その線上には男性の男性自身がある。

もちろん私にも私の私自身がそこにあるわけなのだが、そんなことはお構いなし。

親の仇のように足の付け根側の紐を締め上げる着付けの女性。

紐が締まる分、当然私自身も締まっていく。

自分がお歳暮のハムになったような気分だった。

 

おそらくこの女性は、男性にはこういうものが付いてることを知らないのではないだろうか?

着付けの道を志し、一心不乱に邁進してきた結果、男女の肉体の違いについて学ぶ暇がなかったのだろう。

「男性の下腹部は、私や他の女性と同じように何も付いていない」

と誤解しているのだろう。

その証拠に、袴の下腹部の紐を最後は前で十字に結ぶのだが、女性の手が紐を結ぶたびに当たる当たる。

しかしそんなことを気にも留めず、綺麗に結びあげていく。

 

着付けのお嬢さん、触られている私は何も言わないがね、そこにはあるのだよ。

 

着付けの女性に乱された心を引きずったままだったので、その後の撮影は散々だった。

「新郎さん、緊張しないで笑顔で」

と言われたが、緊張しているのではない。

これは戸惑っているだけだ。

俺はUVER WORLDのTAKUYA∞だ

パーマをあてた。髪のボリュームアップのために内巻きに一回ゆるくパーマをあてた。

私の髪はパーマが当たりやすいらしく、緩めにパーマをかけたはずが結構パーマが強く出てしまった。

それ自体は特に悪く思っていなかった。むしろクルクルな髪型が結構気に入っていた。

 

しかし予想外なはね方をしている箇所が一つだけある。

前髪からサイドに流れていく、こめかみ辺りの毛だ。

ここもゆるく内巻きにパーマをかけてもらったはずなのに、なぜか外ハネになっている。

普段かけているメガネのフレームの部分に当たって跳ね返ってクセが外ハネになってしまったようだ。

 

不思議なのは右側は何ともない外にハネてもいない。

同じようにパーマをかけメガネのフレームが当たっているのにもかかわらずだ。

左側だけ外にハネている。

それも結構なハネ具合だ、毛先が完全に上を向いている毛束だってある。

何気なくそのハネ具合を鏡で見ていた時に、鏡の中に私ではない人が浮かび上がった。

 

UVER WORLDのtakuya∞だ。

 

鏡の中のtakuya∞は丸顔で、目が細く、全体的にくたびれた印象があるが、この外ハネ具合は紛うことなきtakuya∞

 

鏡に向かい、自分の頬の辺りに手を添えて

「俺が…た…takuya∞…?」

なんて言葉が口をついて出た。

 

外ハネだけでtakuya∞を語るな。

そう思う方も多いと思う。

しかしtakuya∞takuya∞たらしめている要因は何だろう。

それは特徴的なあの髪型。

アシンメトリーで、左側の長いサイドの毛を外ハネさせているあの髪型だ。

 

ファンの間ではあの外ハネはtakuya∞ウィングと呼ばれているようだ。

そしてそのtakuya∞ウィングが私の左サイドの髪にも。

つまり私はtakuya∞ということだ。

 

長年、憧れの存在としてtakuya∞を追ってきて、ついに私はtakuya∞に並んだのだ。

 

takuya∞に並んだところで、takuya∞のブログでも見てみようか。

 

あ!

そだ。

5キロ地点あたりで俺に気付いて
追いかけてきて、追いつく前に転んで叫んでた人居たね。
君crew?

転んだの見えたけど
叫んでたから多分大丈夫だろうと思って
そのまま走り去った。
そして、何か叫んでるの分かったけど
聴き取れなかったや。

悪いけど
俺止まら無いんだよ。

伝えたい事あるなら追いついて来い。

ちなみにここに出てくる5キロ地点というのは
UVER WORLDのライブ後にtakuya∞はファンを連れて10キロのマラソンを行い、付いてこられた人に飯をおごるということをやっているそうだ。

 

まだまだ私はtakuya∞に並べていなかったようだ。

加齢臭の破片が胸へと突き刺さる

妻が助手席で寝息を立てていた。

寒くないように私のジャケットを妻にかけた。

数十秒後に妻が急に起きて一言

 

「えっ…なんか臭い」

 

私は気付かなかったが異臭がするようだ。

空調が外気導入になっていたので、外の臭いが入ってきたのかと思ったが、原因を調べると私のジャケットだった。

厳密に言うと私のジャケットの襟首部分の臭いだった。

 

加齢臭の始まりだった。

 

ジャケットの問題の部分の臭いを自分でかいでみる。

私にはその臭いが全く分からない。

強いていうなら布の匂いしかしない。

 

「加齢による体臭の悪化」

「君はもうおじさん」

「自分で気付かないことが証拠」

「お父さんの枕」

と立て続けに妻は私に言う。

冗談めかした口調だが目を背けたくなるような事実を伝えてくる。

その言葉たちが私に刺さる刺さる。

傷心のまま家に帰った。

 

家に着いてもまだ妻が私のことを「加齢臭おじさん」と呼ぶので、さすがに私も怒った。

怒りに任せて妻のTシャツで私の襟首を拭く振りをしてやった。

 

実際に拭いていない事は妻も分かっているのだが、その振りを受けて妻が

「おい汚ねえだろスメハラジジイ」

と私に言った。

 

誤解していただきたくないが、ここまでのやりとりは私と妻の冗談の範疇だ。

文字にすると本当に罵りあっている様に見えてしまうが、実際は笑顔でふざけ合っているだけだ。

ただ私の加齢臭だけが冗談ではない。

本当の加齢臭だ、私にはその存在を知る術はないが。

 

勿論、妻の冗談だと分かっているので、ここまで口の悪いことを本気で言ってきているわけではないと分かっている。

しかし愛する妻からの「おい汚ねえだろスメハラジジイ」はさすがに堪えた。

 

冗談なので私は笑っていたが、心にダメージはあったみたいだ。

笑いながら私は胸を押さえて膝から崩れ落ちた。

 

それからすぐに私は加齢臭対策を始めることにした。

まずは加齢臭とは何かを知らなければならない。

「加齢臭 対策」

と検索し検索結果のトップのサイトを見た。

 

加齢臭は「ノネナール」というにおい物質が原因だそうで、
それは40代以降に多く発生してしまうものらしい。

 

ちょっと待ってほしい、私はまだ30代だ。

 

30代は30代でも38・39歳とかではない。31歳だ。

30代に足を踏み入れたばかりの若輩者に40代体臭との評価。

身に余ります。

 

歳は30、体臭は40。

名探偵じゃないんだからこんな取り合わせはやめて欲しい。

 

だが現状を嘆いても仕方がない、臭いがあるのだから対策をしなくてならない。

それにしてもこのサイト、終始「40代男性のための」というワードが出てくる。

完全に40歳以降の男性のためのサイトに31歳の男性がいるという場違いな状況だ。

そのワードが出る度に心が軋む音がする。

 

取りあえず対策として挙げられるのは以下の通り

 

加齢臭対策と予防


①汗をこまめに拭く

②湯船につかる

③丁寧に体を洗う

④薬用せっけんを使う

⑤タバコを吸わない

⑥和食中心の食生活を心がける

⑦肉や油の多い食事を控える

⑧ストレスをためない

この①~⑧の内、私が出来ているのは④以外の7項目。

現状、加齢臭対策としてかなり理想的な生活を送っている。

 

これ以上、私にどうしろというのだ。

薬用せっけんにすべての期待を託していいのか?

効果がなかった場合、私は次に何にすがればいい?

希望があるから人は前に進めるのだ。

それを思うと最後の希望である薬用せっけんは使わない方がいいのではないか。

 

はからずもこれだけの加齢臭対策を取っていて、なお臭いというのであれば、

加齢臭対策が出来ていなかったとしたら、どれほどの悪臭になっていたのだろう。

フリーザが変身をあと2回残していることを聞かされたピッコロの気分だ。

 

これだけ見事に私の心を折ってくるサイトも珍しい。

全弾クリーンヒットだ。

ここまで見事にやられると、何だか笑えてくる。

しかし心にダメージはあったようだ。

笑いながら私は胸を押さえて膝から崩れ落ちた。